2月24日には今後予想される相続税の増税、基礎控除の引き下げについて書きましたが、一部誤解を招きかねないところがありましたので補足します。
それは「小規模宅地の特例」、特に「特定居住用宅地」に対する課税の特例です。「特定居住用宅地等」とは、相続開始直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、要するに故人と生前から一緒に住んでいた相続人で申告期限まで引き続き住んでいる場合には軽減措置があるということです。
例を示すと以下のような場合になります。
- 配偶者がその土地を取得する場合には無条件で特定居住用宅地等に相当します。
- 息子や娘など同居していた親族が引き続き住むのであれば該当します。
- 同居していなくても生計同一であった親族が引き続き住むのであれば該当します。
- 同居していなかった親族が今後住む場合であっても、その親族が持ち家を持っていなければ該当します。
「特定居住用宅地等」に該当すれば、その広さが240㎡までについて80%が減額されます。 つまり評価額が1億円の土地であれば2000万円の評価でよいということになります。
しかし核家族化した現代、配偶者に相続する場合は問題ありませんが、子供たちが外に出て自立し持ち家をを構えている場合、配偶者が亡くなった時にはこの特例が使えません。 昨日書いたように首都圏で広い戸建て住宅を所有しているような場合、相続人は相当額の相続税を覚悟しなければなりません。
不動産の財産評価についてはその形状、所有形態、現状、規模などによるほか、さまざまな特例、減額措置がありここで生半可に触れることはできません。 もし該当する方が居られて興味がある場合は腰をすえて勉強するか、いっそ税理士などに相談されるのが得策と思います。
そのほかにも大きな変更点があります。それは生命保険の非課税限度額の変更です。
これまで現金で残すより生命保険で残したほうが税法上有利ですという勧誘文句が生命保険セールスレディのうたい文句でした。
現行の死亡保険金については相続税計算上500万円x法定相続人数が非課税枠として控除することができました。 例えば配偶者と子供3人(成人で別会計)の場合2000万円までは遺産として算入しなくてよかったわけです。
ところが税制改正大綱によると、非課税限度額をつかえるのは、未成年、障碍者または被相続人と生計を一にしていた場合のみに限定されます。上の場合で言うと配偶者以外は使えなくなり500万円のみの控除になります。
仮に現金3000万円をそのまま相続し20%の税率で課税されると相続税は600万円。 現行法で配偶者と子供3人が生命保険で相続すると、課税資産は1000万円ですから税額は200万円で都合400万円の節税ができたことになります。
これが税制改正後は控除額が500万円だけですから生命保険の課税資産は
2500万円、相続税が500万円。 前に比べて300万円の増税になります。
生命保険のメリットがなくなったとはいえませんが、大幅に低下したことは事実でしょう。