米国では国債発行上限に達すると思われるぎりぎり直前になって与野党の合意が成立、政府機関の閉鎖が解かれ公務員が職場に復帰しました。
債務上限問題については2月までの暫定措置として更なる国債の発行が認められ、一部で心配されていた国債利払いの停止からリーマンショック並の経済的大混乱につながるという最悪の事態も回避されました。
すでに市場では合意間近と見て株価は値上がりしていましたので、上下院で妥協案が通過したのちは静かな値動きに終始しているように見えます。
しかし先月来の一連の米国国会におけるやり取りには、米国民ばかりでなく世界中の人々がもううんざり、いい加減にしてくれという気持ちでいっぱいでしょう。 オバマ大統領は「一連の騒ぎで勝者は誰も居ない」と述べていましたが、米国の蒙った威信の低下はオバマ大統領の考える以上に大きいと思います。
まずシリア政府による学兵器使用を巡って、アメリカは断固たる態度を示せず議会の合意を待つしかありませんでした。 このことによりオバマ政権はその「決められない脆弱な体質」を見抜かれ、却ってロシアの存在感を高める結果となりました。 米国内の一部にはシリアに限定的武力介入をすることにより、政権の抱える諸問題を一気に解決しようという向きもあったようです。
またオバマ大統領は予算編成など国内問題で議員との調整に手間取り、ブルネイで開催中だったTPP 交渉に参加できませんでした。 このことによりTPP は大きな柱を失いトップダウンでの政治決着が不可能になりました。重要な決定は持ち越しになり、アジア太平洋地域で中国の存在感をさらに増大させる結果となりました。
FRB次期議長の人選でもオバマ大統領は自ら推したサマーズ元財務長官ではなく副議長のイエレン女史にせざるを得なくなりました。 イエレン氏はもともと早期緩和に慎重姿勢を示している人物として知られていました。
本ブログ10月5日「米国予算合意後の株価は?」 にも書きましたが、予想通り危機は回避され、株価も元の鞘に収まりつつあるように見えます。 しかし債務上限問題は4ヶ月先延ばしにされただけで、来年1月から2月にかけて再びこれまでと同じようなやり取りが繰り返されることが予想されます。
本ブログ9月27日「FOMC後の高官発言による右往左往」ではFRBのQEからの出口戦略について書きました。 この記事を書いている当時では、QEからのテーパリングは9月は実施されなかったものの、11月か12月には実施される可能性が高いと見る向きが多かったと思います。 しかしどうやらその予想は外れそうです。
まず2月を前に再び議会が債務上限を巡って同じ不毛の議論を繰り返す可能性が高いと思われ、その前にわざわざリスク要因であるテーパリングを開始することは考えられないからです。 さらに1月末にはFRBのバーナンキ議長の任期が切れます。 8年間議長を務めたバーナンキが置き土産にQEの縮小を発表して、もともと縮小消極派といわれる次期議長イエレン女史の上っ面を叩くというのも考えられないことです。
米国の経済指標の発表も遅れています。 もし雇用統計などでよい数字が今後出てきたとしても、QEの緩和縮小にFRBが踏み込むのは早くて来年3月以降ではないでしょうか?
市場はこうした予想に基づいて、米国金利が低下、つれて新興国通貨が上昇、世界の株価上昇、ひいては日本の株価上昇、世界的なリスクテークの動きが今後強まると見るのですがどうでしょうか?