講談社現代新書の「アポトーシス」という本を読んでいます。 その中に「個体の寿命とは何か」という小節があり興味を惹かれました。
寿命は動物種により大きく異なっているが、同一種ではその最大寿命はほぼ決まっている。例えばラットでは三年、ゾウは八十年、ヒトは百二十年、チョウザメは百五十年である。 この個体の寿命はどのようにして決められているのだろうか。
一般的に、動物の最大寿命は、エネルギー消費速度(時間当たりのエネルギー消費量)に逆比例することが知られている。
最大寿命 = k/エネルギー消費速度
哺乳類では体が小さいと、体の大きい鋳物に比べて一定の体積に対する体表の表面積が相対的に大きくなるため、体温をある一定の温度に保つために、多くのエネルギーを消費しなければならない。 すなわち小動物はエネルギー消費速度が速いのである。
この式からすると、体温を低くするなどしてエネルギー消費速度を落とすと、寿命が伸びることになる。 実際に冬眠する動物は、同一種で冬眠しないものに比べて長生きできる。
食物を制限してラットを飼育すると、長生きするといわれている。 また過度に運動させると短命になるともいわれている。 しかし、スポーツなどの運動を全くしないでエネルギー消費を落としても、寿命は伸びない。 それは運動をしないと、筋肉や各内臓の機能が低下し、早く廊下が進むために、結果として寿命を全うすることができなくできなくなるからだ。
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/95347/1/KJ00004736433.pdf
1992年に出版されベストセラーになった中公新書「ゾウの時間ネズミの時間」では哺乳類が一生に出来る拍動数は15億回だというのが定説だそうです。ハツカ ネズミの拍動数は毎分600回とヒトの10倍以上です。 その分動きは機敏で何をするにもちょこまかセワセワと動き回っています。 そしてその寿命は1/50
程度しかありません。
http://www.chemiphar.tv/lifestyle_related_illnesses/heartbeat/index_01.html
この図は日本ケミファのHPから借用しました。
ハツカネズミの心拍数を計算してみると、寿命を3年として 600x60x24x365x3=
946,080,000 約9億5千万回になります。 ゾウの場合は寿命を100年として
約15億8千万回になります。
あるいは動物の心筋の細胞の中のテロメア遺伝子に、心拍数15億回という数字が埋め込まれているのかもしれません。
心拍数を上げる要素といえばストレスと運動ですが、高血圧の場合心臓疾患による死亡率は心拍数が高いほど死亡数が多いことがわかっています。
適度な運動は心拍数は上がりますが、ストレスは下がります。 運動には肥満、糖尿病、成人病などの発症を抑える効果もあり、死亡率を下げる方向に働くと考えられています。 しかしあまりにも心拍数を上げる運動はまさに命を縮める可能性があるのではないでしょうか? 毎日何十キロも走るとか、毎日何キロメートルも泳ぐとか行き過ぎた激しい運動はかえって健康に良くないように思えます。
かといってのんべんだらりとストレスのない生活を送っていると、ヒトは脳や筋肉の働きが鈍くなり、病気にかかったりして却って寿命が短いことが多いようです。