ノミは距離33センチを跳び、高さ20センチにも及ぶ。これは人が水平距離30メ-トルを跳び、高さ30階のビルを越えることに値する。 この跳躍力の元になっているタンパク質がレジリンといわれる物質で、体長の100倍もの距離を跳躍するノミやバッタの跳躍、一生に5億回も羽ばたくと言われる蜂の翅を支えているとされる。 もし人間がこの跳躍力を身につければ、170m近く跳躍することができる計算になる。 下はその事実を伝える1973年のTimesの記事。
http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,908246,00.html
この記事によるとノミは長距離を飛ぶことができるだけではなく、東洋のネズミノミの一種では1分間に600回の跳躍を3日間にわたって続けることができたという。その貯蔵エネルギ-の効率は97パ-セントとか。若しレジリンで作ったボ-ルを100メ-トルの高さから落とすと、97メ-トル弾むことになる。
このレジリンからどんなゴムより完ぺきに近い弾力を持つ「スーパーゴム」を開発することに、オーストラリアの連邦科学産業機構(CSIRO)が成功した。生体材料やナノテクの素材として注目を浴びている。
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/scramble/scramble2005/20051207.html
以下は東奥日報からの一部引用。
普通のゴムは変形させる際に加わったエネルギーの一部が熱に変わり、元の形に戻るのにはエネルギーの60%しか使われない。だからボールのバウンドは弾むたびに弱まっていく。 この数値は、子供が遊ぶゴムのスーパーボールで80%、人間の臓器にあるエラスチンという柔軟なタンパク質でも90%。一方、エルビンさんらの測定によると、レジリンは97%にも達する。
作り方はこうだ。レジリンを作る遺伝子を大腸菌に組み込み、乳白色をした液体のレジリンを合成。あとは触媒を加えて型に入れ、光でぱっと照らすだけ。
今はまだ十分な強度がない。そこで遺伝子の働き方を変えて強度が上がるかどうかを研究中。「なぜこんなに弾力があるのかも謎。とにかくやることはたくさんある」
実用化すれば、人工椎間板(ついかんばん)や心臓の弁など、繰り返し変形する部分の生体材料に使える。ある企業からは、遊び道具にという提案もあった。
四十年余りレジリン研究に取り組んできたデンマーク・コペンハーゲン大のスベント・アンデルセン名誉教授は「将来は望み通りの性質を持つよう、設計できるようになるだろう」と喜ぶ。
服にくっつく草の種や実をヒントにした面ファスナーなど自然をまねた材料開発は、その後の技術の進歩を受けて本格化した。英国では半導体加工技術を使い、ヤモリの足をまねた吸着テープ開発が進む。
エルビンさんの二十人ほどのチームでは、分野の違う研究者がよってたかってそんな素材を探し、性質を調べ、合成を試みる。「金もうけじゃない。これが科学の楽しさ。次はナマコが自己防衛に使う粘っこい物質をまねて、水中で使えるのりが作れないかな」
レジリンに関する新しい情報がInternet 検索にかからないことから、以後の研究はあまり進んでいないように思えるが、安定して実用化できることを望みたい。